第4章 木曜日
次の木曜日。
『失礼します。入っても宜しいでしょうか。』
控えめで、透き通った声が部屋に響く。
『ああ。構わない。』
『失礼します。』
ユカが入ってきた。
入ってくると、眼があった。
一瞬、俺に微笑んでから、紅茶の準備をしている。
『これから、毎週世話になるな。』
せめてもの、労いの言葉だった。
『いえいえ、国民のために頑張っている、
兵団の皆様に、貢献できて幸せ者です。』
『そうか。』
『右手首良くなって良かったです。』
『ああ、礼を伝えてなくて、すまない。
すっかり良くなった。ユカのおかげた。』
ユカは一瞬驚いた顔をして、こちらを振り返った。
『兵長さんが、ユカって呼んでくれたの初めてですね。
嬉しいです。』
心の中で、なんども呼び捨てにしていたから、
つい、言ってしまった。
『驚かしたな。』
『お気になさらず。紅茶ここに置いておきますね。』
紅茶のカップは、一つしかなかった。
『ユカは、飲まないのか。
契約で決まっているのか。』
『そうですね、幹部の皆様の茶葉代しか頂いてませんので。』
『そうか。でも、まだ、残っているだろう。
一緒にどうだ。』
ユカは笑顔になった。
『では、お言葉に甘えて、是非。』
少し開いている窓から風が、ユカに優しく吹く。
美しい。
心でそう思った。