第1章 はじまり
「鬼となったら?」
三日月が目を細める。
「そうなったら、その時考える」
「喰われてるかもしれんぞ」
「それもあるかもね。
でも、それでも なぜだかこの子を護らなきゃいけない気がするだ」
「なるほど、主らしい答えだ」
「そうかな」
「だか、喰われる前に鬼が斬られるぞ。我らは主の刀だ。ゆめゆめ忘れぬことだ」
「ああ、もちろん」
暫し張りつめた糸のように、見つめ合う三日月と全。
少し間をおき、ふっ、と花びらが一片舞うように空気がほどけ、互いに頬笑む。
「どれ、主。小さきものをわしにも抱かせてくれ」
「本当は抱きたくてウズウズしてたんだろ」
全がゆっくりと三日月に近づき、その腕に赤ん坊を預ける。