第3章 探偵たちの夜想曲
男の荷物を確認している最中目暮警部は何かを思い出したように樫塚さんに質問する。
「そういえば、樫塚さん」
「はい?」
「遺体の足元に2枚のタオルの片方がが先端だけ濡れていたようですが…何故だかわかるかね?」
「さあ…怖くてうつむいていたので…」
「それとそのタオルの下にあったあなたのブーツの靴紐の先に結び目が引っ掛かっていたんだが…」
目暮警部がそう質問を重ねると、彼女は子供の頃の癖だと言った。周りも、特にそれに疑問を抱いておらずそのまま話が進んだ。
「目暮警部…今夜はこの位でいいんじゃないっスか?お兄さんを亡くされて間もないし、見知らぬ男に目の前で自殺されたんですから…」
小五郎さんが彼女に気を遣ってそう言うと、目暮警部が頷き後日、彼女は改めて警察に事情聴取されることとなった。
身分証の提示を求められたが、家に帰れば保健証があると言いそれも後日提示になった。
すると、タイミングを計って降谷くんが樫塚さんに進言した。
「あの、家に帰るなら僕がお送りしましょうか?近くの駐車場に停めてありますし、もしかしたらあの男の仲間があなたの家の近くで待ち伏せてるかもしれませんしね」
「あ、はい…
ありがとうございます」
そんな降谷くんの会話を横で見ていた目暮警部は、胡散臭そうな眼差しを彼に向けた。
「…ところで、なぜ彼がここにいるんだね?」
「いやぁ、私の一番弟子になったもんで…」
「一番弟子ぃ!?」
目暮警部は小五郎さんの言葉に思わず叫んでしまう。
その後、笑っている小五郎さんに目暮警部は今度は呆れた目を向けた。
「また君の隣に探偵気取りが一人増えたわけか…」
「…え?"また"って…」
「君の他にもいるんだよ
最近、毛利くんと一緒にチョロチョロ現場に顔を出す…若い女探偵がな…」
「へぇ、若い女性の探偵ですか…
それはぜひ会ってみたいですね…」
『?』
目暮警部の言葉を聞き彼は一瞬だけ鋭い目をして呟いた。