第3章 探偵たちの夜想曲
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しかし、発射残渣で自殺の証明にはなったものの、疑問はまだ多く残っていた。
なぜ男が樫塚さんを気絶させてトイレに連れ込んだりしたのか…
拳銃で彼女を脅して、場所を移動させて尋問する事もできたのに。
「すごく焦っていたみたいです…
早くそのコインロッカーを見つけないとヤバイとか言ってましたから…」
「しかしねぇ、樫塚さん…
本当にあの男に見覚えはないのかね?」
「はい、全く…」
「あの男の目的が、あなたのお兄さんの遺品である鍵だったのなら、お兄さんの知り合いの可能性が高いんだが…」
「兄の友人には、あまり会ったことがないので…」
男の名前がどうしても分からない。
困り果て沈黙が流れるが、降谷くんが身を乗り出し彼女に質問した。
「ちなみに、お兄さんはなんで亡くなったんですか?」
「……」
「お兄さんの死因は?」
「!あ、はい…
4日前に事故で…」
二回目の安室さんの大きな声でやっと反応した彼女。
『!
(この人、片耳が聞こえていない…?)』
彼女は降谷くんの質問に答えつつ、携帯にあるお兄さんと映った待ち受けの写真を見せてくれた。
『ん?
(この男の人…どこかで…)』
すると、新たな情報が目暮警部の口から出た。
なんと男の携帯には樫塚圭さんを装って小五郎さんに当てたメールしか残っていなかったという。
それだけではなく電話帳のデータも真っ白で、樫塚さん曰くメールは基本彼女の携帯で送っていたらしいが、それでもおかしい…
そして、怪しいのは携帯だけでなく財布もだった。
なんと小銭は全部で五千円近くあり、札は一万円札が2枚と五千円札が5枚、千円札が47枚も入っていたという。
降谷くんの進言で男のポケットの中身を見せてもらった。