第3章 探偵たちの夜想曲
「––––みなさん、お静かに」
「ん?」
階段を降りようとした蘭ちゃんと小五郎さんが、降谷くんの言葉に足を止めた。
彼はドアの前で笑みを浮かべ、人差し指を唇に当てて静かにするよう皆に合図を送る。
「おそらくこういう事ですよ…
依頼人を毛利先生に会わせたくない人物がいて…場所変更のメールで先生を追っ払い、空になった探偵事務所でその人物が事務所の人間としてその依頼人と落ち合ったんです」
「ええっ!?」
「その証拠にドアには鍵をこじ開けたような形跡がありましたし、台所の食器棚の中にはかすかに濡れたティーカップが入っていました…蘭さんの性格からして、濡れたティーカップをそのまま食器棚にはしまわないでしょう?」
「それにさ、出かける前におじさんが落としたタバコの灰、綺麗に拭き取られてたよ」
『それって…
誰かが綺麗に拭き取ったのね…』
「つまりそれは、誰かが先生の留守中に依頼人を招き、テーブルの上を拭き、紅茶を出してもてなした痕跡…
そのティーカップをよく拭きもせず棚にしまったから、まだ濡れていたというわけですよ」
「で、でもなんでそんなことを?コインロッカーを探してもらいにきただけなのに…」
「そのなかにとんでもないものが入ってるんじゃ…!」
「さあ?それは…」
そこで降谷くんは言葉を切り、彼は一気に事務所のドアを開けた。
「本人に聞いてみましょうか」
「ほ、本人って…」
「まさか…⁉︎」
降谷くんの言っている意味が分かり、2人は激しく動揺した。
「先生がトイレに入ろうとした時に、ちょうど返信が来ましたよね?そしてコナンくんがトイレに入ろうとした時も…」
「それにさぁ、僕がトイレに入ろうとした時、床に引きずったような跡が付いてたよ?」
「「ええ!?」」
「そう…おそらくその誰かは何らかの理由で依頼人を連れ込み、まだ隠れているんですよ…あのトイレの中にね…」
トイレに向かおうとしたその瞬間…
──────パァンッ!!
「「?!!」」
突如、トイレの方から鳴り響いたのは一発の銃声だった…
トイレに急いで駆け込んで見ると、そこには拳銃を持ち自殺したと思われる男とガムテープで上半身を縛られ口元も塞がれて泣いている女性の姿があった…