第8章 ダチュラ/沖矢※
気が付いた時
私は知らない部屋にいた
ぼんやりとした頭を働かせながら
体を起こす
どうやら知らないベッドで
眠っていたらしい
沖「おや、目が覚めましたか?」
『お、沖矢さん…!?』
彼、沖矢昴さんは
コナンくん繋がりで知り合った
工藤邸に仮住まいをしている大学院生
ベッドの傍らに置いた椅子に
沖矢さんは座っていた
『私…なんで…』
沖「道で倒れていたんです
私が通りかかって良かった…
何処か痛い所とかはありませんか?」
痛い所は無いと聞かれたが
特に怪我などはしていない様子だった
『大丈夫…だと思います。
すいません、ご迷惑をお掛けして…』
沖「迷惑だなんて思っていませんよ
何があったのか覚えていますか?」
優しい声色で尋ねられて
記憶を遡ってみた
『っ…!私…後ろから布で
口元を抑えられて…それから…
気を失ったんです…』
思い出した瞬間
体がガタガタと震え始めた
掛け布団をぎゅっと
握って俯いていると
すっと両手を包まれた
沖「貴女が無事で良かった…」
ゆっくり顔を上げると
沖矢さんは優しく微笑んでくれた
沖「誘拐や、事件などに
巻き込まれなくて良かったです
…しかし変ですね、
側に落ちていた名前さんの
バックもスマホも財布もある…
何か心当たりとかありますか?」
バックはともかく、
スマホも財布もあるって
何で分かったのかな?って
疑問を浮かべつつも
今はそんな事どうでも良かった
心配そうに見つめられて
私は再びここ最近の記憶を辿った
私は最近、夜遅くに
仕事が終わる事が多くて
帰り道に嫌な視線を感じる事があった
だがそれだけで
ただの勘違いかと思っていた
段々、私の顔に暗い影が落ちていく
沖「何か、心当たりがあるんですね」
私の表情を読み取ってか
沖矢さんはそう言った
『最近…帰りが遅くなる事が多くて…
気のせいだと思っていたんですけど
誰かに見られている様な
跡を付けられている様な…
そんな事が何回かあったんです…』
沖「…ストーカー…
…かもしれませんね」
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