第1章 坂田銀時 やっぱり敵わない
「もう朝か…。」
私はそとに出ると大きく伸びをした。
昨日は私が働いているスナック「お登勢」で宴会があり、片付けやら掃除やらでバタバタしているうちに朝になっていたのだ。
おおかた店の中が片付いたので、スナックの前を掃除していると、遠くから誰かがこちらに向かって歩いてきているのが見えた。
誰か、といってもあんな銀髪の男なんて一人しかいない、銀さんだ。
銀髪でなかったとしても、私は銀さんだとわかったと思う。なぜなら、私は銀さんに片想いしているから。
「あら銀さん、おかえりなさい。」
「おー、か。」
朝から好きな人に会えて嬉しい反面、寝ていなくてひどい顔しているんじゃないかと少し不安になる。こんなことなら、お登勢さんお言葉に甘えて仮眠させてもらうべきだった。
私は気持ちを悟られないように、いつも通り軽口をたたく。
「珍しいわね。こんな時間に帰宅なんて。ふふふ。朝帰りで寝過ごしたの?」
「何言ってんだが、この子は。見りゃわかんだろ?買い物だよ、買い物。」
そう言うと、銀さんは手に持っていた買い物袋を私に見せた。大きな買い物袋はかなりの量の商品が入っていることがわかる。
「たまたま朝イチで良い仕事が入ったんでな。そうだ、もお祝いに一杯どうだ?とびきりのを奢るぜ?」
「ふふふ。そう言って、奢ってくれるのはいつも缶ビールじゃない。」
「はぁーあ。これだからお子様は。仕事のあとのビールの旨さをしらねぇな?あの味に勝るものはないよ?」
「ほとんど仕事してない銀さんに言われても説得力ないよ。」
仕事でよほど儲かったのか、銀さんはいつになくご機嫌な様子だった。
「神楽と定春は仕事の後、そのまま新八のところに泊まりに行っちまって、明日の夕方まで帰ってこねーからな。」
「なるほど、邪魔が入らずゆっくり飲めると?」
通りで機嫌が良いわけだわ。
私たちが話で盛り上がっていると、後ろから声が聞こえた。