a fragrant olive【ONE PIECE】
第11章 a fragrant olive
俺は何もない草原に立っていた。
青い空で緑が生い茂る草原。
その奥には川がある。
『ロシナンテさん』
川の向こうから彼女の声が聞こえた。
そこにいるのか?
俺が川に向かって歩いて行く。
会いたい。
俺に笑ってくれる彼女に会いたい。
彼女は待ってくれている。
早く行かないといけない。
そんな事を思っていると先ほど遠くに見えたはずの川が俺の目の前に現れた。
川の向こうには彼女の後姿が見える。
俺が彼女の名前を呼ぶ前に彼女は歩いて行ってしまう。
---。待ってくれ。
俺は彼女を追いかけようとした。
その時、左腕をつかまれた。
捕まれた左腕の方を見ると、亜麻色の髪に金の瞳をした彼女に似た女が立っていた。
『行ってはダメ』
女は首を振りながら俺が先に行くのを止める。
なぜだ。俺は---を…
『先に行ってはダメ、あれは貴方が向こう側に行くようにこの世界が見せている幻…行けば二度とあの子に会えなくなる』
女は優しく微笑む。
『あの子はずっと…あの島で待っているわ。早く起きて会いに行って』
女がそう言った瞬間、俺に強烈な眠気の様な症状が襲う。
アンタは誰なんだ。なぜ---を知っている。
その答えを聞く前に、俺の意識は途切れた。
『私の愛する娘を…よろしくね』
俺が次に目を覚ました時、最初に目に映ったのは病院のような天井だった。
ここはどこだ…俺は死んだんじゃないのか…。
そもそも先ほどの野原に彼女に似た女は誰だったのか
状況が上手く把握出来ないでいると俺の事を見た人が“先生!”と慌てた声が聞こえる。
しばらくすると誰かが俺のそばに駆け寄り、俺の視界にその人物が映る。
「せ、せぃ…」
その人物は彼女脱出の協力者であった先生だった。
ここは海軍の医療施設なのか?
「ロシナンテさん!良かった…!」
先生の口ぶりからして、俺は一命を取り留めたらしい。
体中痛いし、満足に動かせねぇ。
でも、生きている。
俺はそう思い、再び目を閉じた。