a fragrant olive【ONE PIECE】
第10章 Purple anemone
「俺は…あいつを助けてぇ。治療法を見つけたい」
「はい…」
「だから…その…」
彼は少し言いにくそうに言葉に詰まる。
なんとなく、私には彼の言いたい事が分かった。
私にお兄さんの件で待つように言っているから言いにくいんだろう。
「…大丈夫ですよ。ロー君の病気、治してください」
私がそう言うと彼はありがとうと言い、抱きしめてくれる。
大きくて安心する彼の腕の中。
それに身をゆだねようと思ったが、ある事を思い出す。
「あ…ロシナンテさん、行きたい場所があるので連れてってくれませんか?」
「行きたい場所?」
「ええ、あなたが帰って来た時に行きたかった場所があるんです」
次、彼と会える日は分からない。
だからあの木を見に行こう。
私は彼に抱き上げられ、目的地までの道のりを彼に教えていた。
前にレイモンドさんに場所だけ聞いていたあの木がある場所。
「…ここか?」
「目の前に何がありますか?」
「…金木犀だ」
彼の目の前には金木犀があるのだろう。良かった。
季節が違うから花は咲いていない。あの甘い匂いがしないのは少し残念だ。
私と彼を出会わせてくれたあの匂い。
「1本だけ、昔植えられたって教えてもらったんです」
「なるほどな、金木犀は俺たちの出会いだもんな」
「ええ。花が咲いていれば完璧でしたが」
私がそう笑っていると彼は再び歩き出し、私を抱き上げたまま地面に腰掛けた。
木の匂いが強いからおそらく木の下だろう。
私は彼の膝の上にいる体勢で退けようと動くが、彼の腕に捕まり叶わなかった。
「ロシナンテさん?」
彼は私を膝に乗せたまま正面を向くように私の体勢変える。