a fragrant olive【ONE PIECE】
第4章 彼との時間
私は彼の手を離れ、歩みを進める。
「リオ?」
彼が私の名を呼んだ。
後ろから何度も私の名前が聞こえる。
でも足が止まらない。
どこ?あの青い色はどこに行けば見える?
彼の声も遠くなったような気がする。
脛くらいまでの深さに来た時…
「っ!」
何か石か貝殻に躓いたのだろうか、バランスを崩して私の体は海へと向かっていく。
あ、また怪我したら先生に怒られるかな…。
呑気にそんなことを考えていた。
「リオ!!」
強く名前が呼ばれた瞬間、私は後ろから腕をひかれた。
『リオ、海はすべてを包み込んでくれるのよ』
子供のころ、大好きだった母に言われた言葉が頭に木霊した。
バッシャーン!!
激しい水音と共に私の体が海水に濡れる。
でも転んだ時の痛みはない。むしろ誰かの上にいるような…
「大丈夫か?!」
「っ!あっ、すみません!」
私は彼の上にいた。
彼が咄嗟に守ってくれたのか、彼の身体も海水に濡れていた。
大変。
私はいいけど、彼が風邪を引いたらお仕事に影響してしまう。
「急に歩いていくからびっくりした…」
「すみません、あのお怪我は…」
「いや、そこは大丈夫だ。」
彼はそう言うと私を抱いたまま立ち上がる。
「風邪引く前に戻ろうな」
「はい…」
彼は海から出ると砂浜に置いてあった靴を持ち、研究所へと歩いていく。
海水に濡れた身体は冷たいけど、不思議と彼の腕はとても暖かく感じた。