第27章 黄の節制 1
ザーザー…
雨の音?
私、いつの間に座りながら眠ってたの?
たしかベッドで横になったはず。
確かめようと目を開くが辺りが真っ暗で何も見えない。
雨に紛れる人の声。
ぼやけて何と言っているのかわからない。
でもこの声、確かどこかで…。
キキーー!ガンッ!!!
突然体に走る強い衝撃と焦げた匂い。
視界に広がるのは…。
「お母さん!!!」
そう叫びながら私は目を覚ました。
辺りはまだ明るいが、部屋には誰もいなかった。
久しぶりに見たな…。
まだ心臓がばくばくとうるさい。
「水でも飲もう。」
テーブルの水を取りに起き上がりながら、さっき見た夢を思い出す。
何年ぶりだろう。妙にリアルな夢だった。
思い出したくない過去。
数年前、家族を失くした交通事故の記憶。
テーブルには紙がおいてあることに気がついた。
拙い文字が並んでおり、瞬時にそれが置き手紙だときがついた。
“お姉さんへ
よく寝てるみたいなので、私だけみんなと買い物に行ってきます。ゆっくり休んでください。”
「寝過ごしたか…。」
そう言えば目の下にクマもできてたし。
あんな夢を見るくらいだ。自分で思っている以上に疲れていたのかもしれない。
まあ、うなされているところを見られなかったのは不幸中の幸いね。
さて。みんなが帰ってくるまで何をして過ごそう。
できれば、このモヤモヤした気分が吹っ飛ぶような楽しいことがしたいな。
一人じゃなければ、買い物に行けるんだけど…。
そう思っていると部屋のチャイムがなった。
「アンちゃんが忘れ物でもしたのかな?」
念のため、覗き穴から確認すると花京院が立っていた。