第23章 力 2
下の階は妙にひんやりしていて、みんながいるとは思えないほど物音ひとつしなかった。
異様な静けさのなかに、遠くで流れる水の音がこだまする。こんなときに、誰かシャワーを使っているのだろうか。
考えながら歩いていると、先を歩いている承太郎にぶつかった。
「承太郎、どうしたの?」
承太郎は立ち尽くして船室を見ている。みんながいるはずの船室だ。部屋からは異常に血の匂いがしている。
「まさか…」
「見るんじゃあねぇ!!」
船室に顔を覗かせた瞬間、承太郎が私の顔を自分の手で覆ったが遅かった。
「全員、死んでるの?」
「水兵はな。」
水兵たちは無惨にも殺されてしまっていた。
一瞬しか見えなかったが、その姿は必要以上に手や足を引きちぎられていた。犯人は命を弄んでいるようにしか思えない。
承太郎は体を部屋から遠ざけてから手を離す。
「これではっきりした。彼らを殺したのはあのオランウータンよ。あいつがきっとスタンド使いなんだわ。」
あの時、オランウータンが怪しいと思ったときにちゃんと確かめておくべきだった。
怒りと後悔で声が大きくなる。
承太郎は私とは対照的に落ち着いた声で言った。
「部屋の中にアンがいなかった。急いで探すぞ。」
踵を返して歩きだした承太郎の拳が強く握られていたのを私は見逃さなかった。
私はさっき拾った錠前をもう一度強く掴んだ。
「さっきからシャワーの音がしてる。なにも知らずにシャワーを浴びているのかもしれない。行ってみましょう。」
私たちはシャワー室の方へ向かった。