第23章 力 2
アンと船室へ向かう途中、さっき見ていたオランウータンが私たちを呼び止めた。猿は錠前を指して、私たちにここから出せとアピールしていた。
「だめよ、キーがどこかわからないし。あんた大きいもの。」
アンは断って先に進もうとするが、猿はまだ食い下がり、アンにリンゴの切れ端を差し出している。
「あんた、ずいぶん頭の良い猿なのね。」
アンはオランウータンに普通に話しかけていたが、正直私はこの猿を気味悪く思っていた。
猿とは思えない、相手を見透かしたような嫌な目付きをしていたからだ。
猿はマッチに自分で火をつけタバコを吸い、ピンナップ写真まで眺め始めた。その動物離れした行動に、私は鳥肌がたった。
「こいつ、後ろにチャックでも着いてるんじゃない?」
思わず口にしてしまったが、猿は自分は着ぐるみではないと背中を指して見せつけた。そしてあの嫌な目付きでニヤリと笑う。
まさかこいつ…。
「おい、気を付けろ。」
後ろから声がして振り返ると、水兵が二人いた。アンが遅くて迎えに来たらしい。そのまま水兵はアンをつれて下の船室へ向かった。
部屋に残ったのは私とオランウータンだけ。
猿はまだニヤニヤと笑いながら私の方を見ている。
早くみんなと合流しなきゃと思うが、体が思うように動かない。
「おい、アンナ!」
「なぁにこんなところで突っ立ってるんだ?女の子を送り届けたなら俺たちと行くぞ。」
「承太郎!ポルナレフ!」
二人の声がして私の体は嘘のように動き出した。
ちょっと神経質になりすぎているかもしれない。
私は考えるのをやめ、承太郎の元へ急いだ。