第22章 力 1
奇妙なことに、船には人の気配が全くなかった。
操舵室や他の船室も見て回ったけれど、誰もいない。なのに、船は進行し正常に機械も働いている。どういうことなの?
「みんな来てみて!」
アンの声がして行ってみると、そこには1匹のオランウータンがいた。
なぜオランウータンが?
とにかく一旦みんなで集まろうと甲板へ戻ったとき、クレーンがひとりでに動き出した。
「アヴドュル!その水兵が危ない!」
おじいちゃんが声をかけたときには、すでに手遅れだった。クレーンは水兵の頭を潰し、そのまま水兵の体を持ち上げる。
私はその光景に、思わず目をそらした。私だけじゃない、みんなや他の水兵たちも動揺していた。
安全のため、水兵たちには下の船室で待機してもらうことにした。
女の子、アンは不安そうな顔をして私たちを見ている。それに気がついたおじいちゃんはアンに目線を合わせて言った。
「君に対してひとつだけ真実がある。我々は君の味方だ。」
そして私の方を振り返った。
「アンナ、船室まで彼女に着いていってあげなさい。女の子一人では心細いじゃろう。」
まあ、相手が女の子じゃ頼むのは私になるわね。
アヴドュルやポルナレフならかえって不安を感じるだろうし。
「はーい。」
「送り届けたらすぐ戻ってくるんじゃ。いいな。」
「わかってるわよ。さ、行きましょう。」
私はアンを連れて船室に入り、みんなは本腰をいれてスタンド使いを探し始めた。