第22章 力 1
脱出ボートに乗り込んだあと、私は承太郎に声を掛けた。
「承太郎、さっきはありがと。傷を治すわ。」
私が承太郎の体の傷に手を伸ばすと、承太郎は私の顔を見つめ口を開いた。
「顔色がよくねえぜ。どうした?」
「そう?」
さっと傷を治し、承太郎の頭を帽子ごと強引に撫でた。
「今度引っ張って助けてもらうときは、誰かさんが引きずり込まれないようにダイエットでもしようと悩んでたのよ!」
「ふん。」
「承太郎、私は大丈夫よ。元気なら、さっき誰かさんにもらったから。」
私はニヤニヤしながら花京院の方を見た。花京院は咳払いして、私から目をそらす。
花京院は気が緩んだせいだと言っていたけれど、
さっき転びそうになった私を助けてくれた時におどけていたのは、彼なりの気遣いだったんだと思う。
「ありがとね。」
そう言って、ニッと笑って見せた。
もう大丈夫だと二人に思ってほしかったし、何より年下君たちに心配されでばっかりではいられない。
承太郎は、やれやれと言った感じで海を眺め始めた。
さらに、その承太郎を不審そうに眺めている少女。アンって言うんだっけ?
さっきの戦いで、要注意人物に認定されてしまったのかもしれない。
「あんたたち、一体何者なの?」
アンは怪訝な顔で尋ねた。
おじいちゃんは家族のために旅を急いでいるとだけ伝え、彼女に水を手渡した。
が、アンは口に含んだ途端盛大に吹き出した。
「こらこら、大切な水じゃぞ。」
そう言うおじいちゃんには目もくれず、アンは口をパクパクして沖を見ている。
その視線の先には大きな貨物船があった。