第19章 暗青の月 1
花京院side
鮫が集まる海域だと言う船員の言葉に驚いていた次の瞬間、ドボンという音が聞こえた。
「アンナ!?」
ジョースターさんの声で飛び込んだのがアンナだとわかった。アンナは泳いで子供の方へ向かっている。
「アンナ、戻れ!君も危ない!」
「チッ。仕方ねぇ!!」
みんなが心配するなか、ジョジョもアンナを追うように海へ飛び込んだ。だが、鮫は予想外に速いスピードでどんどん子供に近づいている。
「このままじゃ、ジョジョが間に合わない!」
そう叫んだ時、アンナは子供に追い付き、その子を庇うように鮫と向かい合った。
「魚類はね、エラに空気を入れると呼吸ができないのよ!」
そう言うと、彼女はソードマゼンダで鮫を浮かせエラに強風を浴びせた。弱ったところを、あとから追い付いたスタープラチナが殴りつけた。
鮫が倒されたことで、ようやくみんなも安堵のため息をついた。
ソードマゼンダは軽々と鮫を浮かせるほどパワーがあるのか。回復能力がある分、てっきり攻撃はサポート程度かと思っていたが、思ったよりも風の力が強い。
ジョジョが子供の帽子をとった。どうやら女の子だったらしい。アンナは安心したように笑顔でこっちに手を振っている。
ソードマゼンダは強いが、それにしても鮫のいる海に何の迷いなく飛び込めるものだろうか。それも見ず知らずの子供を助けるために。
その姿が、自分を救ったときのジョジョと少し重なった。
彼女に助けに行った理由を聞いても、咄嗟に体が動いたと言うんだろう。普段は明るく楽しそうにしている姿の奥に、僕にはない強さがある、そう感じた。
気がつくと、いつのまにか周りの声が再び緊迫したものとなっていた。
海を見ると、ジョジョたちが急いで船に向かって泳いでいる。その後ろには別の生き物の影がジョジョたちを追っている。さっきジョジョが殴った鮫は引きちぎられていた。
「早く船まで泳げ!」
船まで数メートルと言うところまで来たとき、
アンナは、ソードマゼンダで自分と子供を船まで飛ばした。
「あの距離なら僕に任せろ!!」
僕はハイエロファントグリーンでジョジョを引き上げる。
一息ついて海を見下ろすと、さっきの影は消えてしまっていた。