第19章 暗青の月 1
主人公side
私たちはあれから船に乗り出港した。
おじいちゃん曰く、シンガポールまでは3日はかかるそうだ。
しばらくはゆっくりできそうね。
私は承太郎の隣の椅子に座った。海風が心地よく流れていく。出発してからトラブルが続いていた分、こうして穏やかに時間を過ごせるのは気持ちが安らぐ。
辺りを見渡すと、ポルナレフとアヴドゥルは甲板で談笑していた。
おじいちゃんは、船の上でも学生服を着たままの承太郎と花京院に突っかかっている。
「学生は学生らしく、ですよ。と言う理由は、こじつけか…。」
「ふん。」
2人とも頑固ね…。
アヴドゥルはそれを聞いて、これが武士道!って感動していたけど、多分武士道関係ないよ。
「おい放せ、放しやがれ、このボンクラがー!」
後ろか突然大きな声が聞こえ、私たちは後ろを振り返った。後ろでは乗組員の男が、帽子を被った子供を捕まえているところだった。
男の子?
いや、帽子で髪が見えないだけで、女の子だな。どうやらその子は船倉に隠れていた密航者らしい。シンガポールへお父さんに会いに行きたいだから見逃してほしいと懇願しているみたいだが、乗組員の男はからかうようにダメだと否定する。
乗組員の男、密航者とはいえ流石に態度が悪すぎじゃないかな。これ以上何かする気なら引き留めようと椅子から立ち上がったその時、女の子は男の腕に噛みついてそのまま海に飛び込んだ。
「おほ~、飛び込んだぞ!元気いいーっ。」
度胸あるな…。
みんな口々に言いながらデッキの手すりから覗きこんでいる。すると、一人の船員の顔がみるみる青くなった。
「まずいっすよ。ここは鮫の集まる地域なんだ!」
鮫?
私はそれを聞いた瞬間、考えるよりも先に海に飛び込んだ。