第16章 銀の戦車 1
救命ボートから救助され香港に到着したのはついさっき。救助に時間がかかったおかげで、時刻はもうお昼前になっていた。
「おじいちゃんまだかな。私お腹すいた…。」
「夕べから何も食べていないですからね。無理もない事ですよ。」
「てめー、口を開いたと思ったら飯の話以外言えねーのか。」
今はおじいちゃんが誰かと電話しているため、それを待っているのだった。
「機内食、楽しみだったんだけどな…。」
「そこの姉ちゃん、お腹すいているなら、お粥でもどうだい?」
「お粥…?」
お店のお兄さんは、気前のいい笑顔でお粥と点心を勧めてくる。
花京院とアヴドゥルが注文しようとしたとき、電話を終えたおじいちゃんが戻ってきた。
「お前ら何を食おうとしてるんじゃ。これからわしの馴染みの店に行こうというのに。」
「おかえり、おじいちゃん!ご飯いくの!?」
お粥の匂いで刺激されていた私は、お店にいくと聞いてさらに空腹感が増した。
やばい、お腹鳴りそう…。
「じじい、どこに電話していたんだ?」
「ん?あぁ詳しいことは店に行ってから話すが、この先安全かつ最短でエジプトへ向かうためには、色々と策を講じなければならんと言うことだ。」
「策、ですか?」
「ジョースターさん、我々はもう一般人の犠牲を出すわけにはいきません。最短といえども飛行機の使用は…。」
ぐうぅぅう…
あ、鳴っちゃった。
「ん?」
みんなの視線が私に集中する。
「ははは…。ごめん、お腹減っちゃって。」
「ジョースターさん、とりあえずそのお店にいきませんか?腹が減っては戦はできぬ、と言いますし。」
「それもそうじゃな。」
おじいちゃんは意地の悪い笑みで私の方に近づく。そして私の頭をくしゃりと撫でながら言う。
「若いお嬢さんがお腹がなるほど餓えとるんだものなぁ。仕方ない、先に店に行くとするか。」
じじい、あとで覚えてなさいよ。
こうして私たちは、おじいちゃんの馴染みの中華料理屋へ向かうことになった。