第2章 プロローグ 1
バンッ!!!
「スージー!アンナはどこじゃ!」
けたたましく扉を開くと、ジョセフはスージーに訪ねた。
紅茶を飲んでいたスージーは、カップをテーブルに置いて質問に答える。
「アンナがどうかしたの?アンナはさっき大学に出掛けたところですよ、ジョセフ。」
ジョセフは、目を丸くしているスージーを見て、自分がすごい剣幕で部屋に入ってしまったことに気がつき、ばつが悪くなった。
「いや、大した用事ではないんじゃが、今回の出張にあいつも同行させてやろうと思ってな。お偉いさん方は若い娘がおると喜ぶんじゃよ。」
「あらそうだったの。ふふふ。そう言って、本当はあなたが寂しいだけでしょう?」
いつものことかと、スージーはジョセフから視線を落とし再び紅茶を一口飲んだ。
ジョセフはスージーの様子を見て、彼女がこの一大事に気がついていないことに安堵した。彼女に無駄な心配はさせたくない。
「かわいい孫に、わしの勇姿を見せて何が悪いんじゃ。このまま大学へあの子を迎えに行き出張にいってくる。しばらく二人とも家を空けるが心配せんでくれ。」
「それは構いませんが…。あの子、サマーバケーションが終わったところなのに、長期で休むのは難しいんじゃないかしら?」
「そんなもん、わしがなんとかする」
「天下の不動産王が聞いてあきれるわね。」
スージーはくすくすと笑いながら席をたつと、ジョセフの方へ向かう。
そしていつものように頬に口付けをする。
「Take care, my love. あの子にも愛していると伝えて。」
「ああ、行ってくる。」
ジョセフは別れの挨拶を済ませると、玄関へ向かった。