第15章 そして香港へ
海上に不時着したあと、キャビンアテンダントの指示で乗客は順に飛行機を脱出した。
私たちはなんとか全員同じ救命ボートに乗り込むことができ、救助を待っていた。
ところが、救助の船やヘリコプターは来るのに時間がかかるらしく、私たちはしばらく救命ボートで過ごすこととなった。いきなりの戦闘と、不時着でみんな疲れている様子。それに、今後の旅のことを考えると私も少し不安を感じる。
何か気が紛れるものはないかと、私は顔をあげ話題になりそうなものがないか探した。
周りを見渡していると、隣に座っていた承太郎と目が合う。承太郎も私と同じように救命胴衣を着ているが、なんというか…。
「ふふふ。おじいちゃん、承太郎。救命胴衣がずいぶん窮屈そうね。」
花京院とアヴドゥルが顔をあげ、承太郎とおじいちゃんの方を見る。
「何を言うか。この非常時に、着られるサイズがあっただけでもありがたいわ。」
「それに承太郎、そんな重たそうな鎖なんか着けてたら、救命胴衣を着てても沈んじゃうんじゃない?」
「…沈むかどうか、テメーで試してみるか?」
「残念でした。私には脂肪があるからね。沈められても浮いてくるわよ。」
「ふん。」
承太郎には鼻で笑われてしまったが、それでもさっきよりみんなの表情は和らいでいた。
バカらしく思われただろうけど、緊張が続く旅だからこそ、私はこう言う息抜きを大切にしたい。
「そう言えば承太郎、タワーオブグレーに口と手切られてたでしょ?今の間に治しておくわ。」
私はソードマゼンダを出現させた。
承太郎は黙って左手を私に見せる。ソードマゼンダは承太郎の手に触れその傷を治した。
「さ、次は…」
「口の中はいい。」
承太郎はソードマゼンダの手を制止する。
「え、でも…」
「かすり傷だ、放っておけば勝手に治る。それより、花京院をみてやれ。」
「そう?なら、花京院のとこにいくけど、もし痛くなったらいつでも言ってよ?」
丸め込まれた感じはするけど、承太郎の言うことだ。信じるとしよう。
私は立ち上がり、花京院の隣に座っているアヴドゥルと席を替わってもらった。