第14章 灰の塔 3
「なんてこった!してやられた!」
「ひどい…。」
操縦室にいたパイロットは全員舌を抜かれて殺されてしまっていた。
おまけに、自動操縦装置も破壊されていて飛行機は墜落しかかっている。
「ぶぁばばばーーーあはははは!」
声に振り返ると、
死んだと思っていたタワーオブグレーの老人が操縦室の入り口に立っている。
さっきの戦闘で血まみれで舌が裂けており、老人は目を背けたくなるような姿だった。
老人は、私たちではエジプトへはたどり着けない、ディオはすべてのスタンドの頂点に君臨できるお方である、そう言い残して死んでいった。
…根っからの悪党さえも心酔させるディオ。何て恐ろしいやつなの。
「ひっ…」
スチュワーデスもこの光景を見てしまったらしい。悲鳴こそあげなかったが、彼女たちは震えていた。
承太郎はスチュワーデスに声をかける。これからおじいちゃんが飛行機を海に不時着させるから、乗客の対応をしてほしいと。
「待って承太郎!ソードマゼンダなら飛行機を治せるわ。不時着させなくてすむかもしれない。」
「いや、ソードマゼンダなら飛行機を治せるが、肝心の飛行機を運転できるやつがいねぇ。パイロットが死んでしまっていているからな。」
「操縦できるものがいないなら、下手に飛行を続けるより不時着させた方が安全だろう。急ぐ気持ちもわかるが、飛行機に乗っている人たちを巻き込むわけにはいかない。」
「そうね。おじいちゃん、何とか不時着させて。」
「しかし…。わしゃこれで三度目だそ。人生で三回も飛行機で墜落するなんて、そんなやつあるかなぁ。」
((くそじじい…))
ホリイちゃんの言葉を借りると、
今、承太郎と心が通じあった気がしたわ。
まあ、決してホリイちゃんが使うような良い意味ではないのだけれど。
「二度とテメーとは一緒に乗らねぇ。」
こうして私たちは何とか香港沖35kmのところに不時着した。