第14章 灰の塔 3
「アンナ、ソードマゼンダでどうにかならねーのか?」
承太郎はタワーオブグレーに殺されてしまった人達を見て私に尋ねる。
「無理じゃ、全員死んでしまっている。ソードマゼンダは傷を治せても、死んだ者を蘇らせることはできんのじゃ。」
おじいちゃんが私に代わって答える。
そう、私が治すことができるのは生きているものだけ。死んだものは生き返らない。
でも、せめて…。
私はソードマゼンダを出現させると、死んだ人達の傷を治していく。
「でも、せめて少しでも安らかに眠れるように。」
そう祈りを込めて。
「その力は、優しいお前さんにぴったりの能力じゃよ。ほんとに。」
一方、花京院とアヴドゥルはタワーオブグレーの本体を見ていた。
タワーオブグレーの本体には肉の芽が埋め込まれていなかったらしい。
アヴドゥル曰く、タワーオブグレーは旅行者見せかけて殺し金品を巻き上げるような根っからの悪党。今回もディオに金に雇われ利用されていたに違いない、とのことだった。
「変じゃ、さっきから気のせいか機体が傾いて飛行しているぞ。」
言われてみれば、そんな気もする。
座席から落ちたコップが同じ向きで転がっていく。
「まさか!」
おじいちゃんは何かに気がついたようで、血相を変えて操縦室へ走っていった。私たちもおじいちゃんに続く。
キャビンアテンダントが承太郎を見て頬を染める。が、承太郎は容赦なくキャビンアテンダントを押し退ける。
「どけ!アマ!」
承太郎が押し退けたキャビンアテンダントを、花京院が受け止めた。そしてキャビンアテンダントの肩を抱く。
「女性を邪険に扱うなんて許せんやつだが、今は緊急時なのです。許してやってください。」
「は、はい…。」
緊急時何て言いながら、普通はそんな王子さまみたいな対応できないよ、花京院。
ほら、キャビンアテンダントがうっとりしてるじゃない、緊急時なのに。
だめだ、緊急時と思えば思うほど、その光景がおかしくみえて笑いをこらえられなくなってしまう。
「アンナ、今は緊急時なんだ。花京院を見て笑ってる場合じゃあないぞ。」
「ご、ごめん。アヴドゥル。」
そうよ、笑ってるな時間なんかなかったわ。
私は気を取り戻してアヴドゥルと操縦室に入った。