第11章 スタンドという力 2
私たちが本探しを再開すると、間もなくして後ろに人の気配を感じた。
アヴドゥルがその人物に声をかける。
「もう傷はいいのか?悪いが今は取り込み中なんだ。」
気配の正体は花京院だった。
顔色も良さそうで私は安堵する。
「スタンドが自分の害になることなんて、あるんですか?」
花京院はアヴドゥルに尋ねた。
アヴドゥルは職業柄、スタンドについて私たちよりかなり詳しい。アヴドゥルは花京院にホリイちゃんの状況を包み隠さず説明した。
スタンドに耐性のない人は、スタンドに蝕まれ死んでしまうこと。
ホリイちゃんの場合は、ディオとの因縁を断ち切れば助かる可能性があること。
花京院は黙って話を聞いていた。
私は彼らを横目に見ながら本を探しを続ける。
「あ、あった!アヴドゥルこのハエよ!」
「おお!早速ジョースターさんに知らせなくては!」
私とアヴドゥルは、承太郎たちのいる部屋まで走った。
ハエはナイルウエウエバエと言って、エジプトのアスワン付近にしか生息しない種類だとわかった。
たった一匹のハエで、ディオのおおよその位置がつかめたのだ。承太郎とおじいちゃんの目にも力が戻る。
すると突然、後ろから声が聞こえた。
「やはりエジプトか。」
「花京院。」
花京院が肉の芽を植えられたのもエジプトだったらしい。
「いつ出発する?私も同行する。」
「同行するだと?なぜお前が?」
「そこんところだが、なぜ同行したくなったのかは私にもよくわからないんだがね。」
「けっ。」
「お前のおかげで目が覚めた。ただそれだけさ。」
覚悟を決めてこの部屋に来た花京院に、承太郎はそれ以上何も言わなかった。