第10章 スタンドという力 1
書庫は灯りがつかないので、アヴドゥルの炎を頼りに中に進む。
「アンナ、ここからは私一人で本を探せる。君もホリイさんが心配だろう。部屋に戻るといい。」
「ううん、承太郎たちがついているからホリイちゃんは大丈夫よ。それに、ああいうときは親子水入らずの方がいい。私も本探しを手伝うわ。早く本を見つけて出発しないと。」
「まったく、こんなときまで意地をはるのか。いいだろう。それなら君はあっちの本棚を探してみてくれ。」
「わかった。」
アヴドゥルは少し苦笑いていたが、深追いはしてこなかった。
本当はすごく心配だし、ホリイちゃんの側についていてあげたい。でも承太郎やおじいちゃんの方が心配しているんだし、それを邪魔をしちゃいけない。
いつもは好き勝手言うくせに、どうして肝心なときには色んな事を考えてしまって本当のことを言うことができないんだろう。
嫌な考えばかりが頭を巡り集中を欠いた私は、本を床に落としてしまった。
「あ、ごめんなさい!」
慌ててしまって手が震え、うまく本が拾えない。
「アンナ。」
震える手を、アヴドゥルの手が包む。
アヴドゥルの手はゴツゴツしていて、大きくて、とても温かい。アヴドゥルは優しい顔で、私の目をまっすぐに見て言った。
「何度も言うようだが、君はもう少し肩の力を抜いた方がいい。それに、承太郎がついているから大丈夫と言った以上は、彼らのことをしっかり信じてあげなくちゃあな。」
「…そうね。ありがとう、アヴドゥル。」
手の震えはいつのまにか止まっていた。