第9章 花京院典明 3
「はい、傷はきれいになった。ズボンも直しておいたわよ。」
「おう。」
承太郎は満足そうに直ったズボンを眺める。
「ねえ、承太郎」
「ん?なんだ?」
承太郎はズボンから私に視線を移す。
「私が言うことじゃないと思うんだけど、花京院のこと助けてくれて…ありがとうね。」
「ふん、確かにテメーに言われる筋合いはねぇな。」
「それはわかってるよ。でも、さっき花京院と話してみたらすごく良い子だったから。生きててくれてよかったなと思って。私たちは日本に来るまでに、花京院の他に肉の芽で操られている人に襲われたことがあるの。でも私たちのスタンドでは助けることができなくて、みんな肉の芽が脳を侵食してしまった。」
あの時のことは、思い出したくない。そのくらい悲惨な光景だった。
「おじいちゃんや、アヴドゥルもその経験があるから花京院のことも諦めていたと思う。でも、承太郎は最後まで諦めなかった。おまけにちゃっかり救ってしまうなんて。ほんと、大したやつだよ。」
そう言って、私は承太郎の頭をくしゃりと撫でた。承太郎はずれた防止を深く被りなおす。
「やれやれ。オメーはいつも余計なことを考えすぎだ。」
帽子が隠れて表情はよく見えないが、それでも照れ隠しなんだろうということはなんとなくわかった。
「じゃ、私はもう行くわね。傷が治ったからって暴れるんじゃないよ。スタンドを使ったあとは思った以上に疲れているんだからね。」
承太郎は私に背を向けて寝転び、私の問いかけには答えなかった。
承太郎のことだから、理由がなければ暴れることもないだろう。返事がないのはいつものことだし。
「さてと、私も部屋で休むとするかな。」
「二度寝か。」
「うるさいわね、ほっといてよ。」
こんなときだけ返事を返すんだから。
やれやれと私はため息をつき、承太郎の部屋をあとにした。