第8章 花京院典明 2
花京院がいる部屋の前で止まり、声をかける。
「失礼します。」
「あ、はい。どうぞ。」
と返事が聞こえたので、私は引き戸を開けた。
すると、部屋の中には男の子と、男の子を取り囲む緑色をしたナニかがいた。私はそのナニかと目が合い驚いて後ずさる。
「うわっ。」
すると足元にもそのナニかがいたみたいで、私は躓いてしまった。転ぶと思って目を閉じたが、尻餅をつく前にふわりと私を何かが包んだ。
「驚かせてしまってすみません。あなたにも見えるんですね、僕のスタンド、ハイエロファントグリーンが。」
花京院の声で目を開けると、さっき目があったナニかの顔が私の目の前にいた。ハイエロファントグリーンと言うらしい。
「きれいな色…。」
私は透き通るような緑に思わず声が出てしまった。
「えっ?」
「あ、ごめんなさい。男の子にキレイなんて失礼よね。私5月生まれだから誕生石がエメラルドでね、その影響もあって透き通るような緑が好きなの。あなたのハイエロファントグリーン?が私の好きな色だったからつい…。って、初対面でなにベラベラ喋ってるんだろ。あっ、晩御飯のお盆は!?」
ハイエロファントグリーンに気をとられてすっかり忘れていた。
ようやく晩御飯を持ってきた事を思い出して辺りを見渡すと、ハイエロファントグリーンがこぼさないようにお盆を持ってくれていた。ホリイちゃんが言う“とっても良い子”というのはどうやら本当みたいね。
ここで、私は初めて花京院の方を見た。特徴的な前髪をしている彼は少し唖然とした表情をしてこちらを見ている。
「助けてくれてありがとう。初対面でうるさくしちゃってごめんなさいね。私、承太郎のいとこのアンナです。」
「あ、いえ。私の名前は花京院典明。私の方こそ、夕食を持ってきてくださったのに、驚かせてしまってすみません。」
「いいのよ、気にしないで。それより、ご飯が冷めちゃうわ。食欲ある?一緒に食べましょ!」