第55章 正義 1
「そこの人!すまない。人が死んでいる。警察を呼んできてくれ。」
ちらりと花京院の方を見ると、彼は声をかけた女性の方を見て固まっていた。
「どうしたの花京院…っ!?」
花京院の視線をたどって女性の方を見ると、花京院が固まっていた理由がわかった。
膿のようなものが、女性の頬一面に吹き出ていたのだ。
「ひどい…。」
「失礼しました、ちょいとニキビが膿んでしまっておりまして。」
話を続ける女性に向かって、私は咄嗟にソードマゼンダを伸ばした。むやみにスタンドを使ってはいけないのはわかっているけれど、同じ女性として見過ごせなかったからだ。
が、彼女の頬に触れた瞬間、私は思わずスタンドを引っ込めた。
「そ、そんな…。」
私が思わず後ずさると、庇うように花京院が前に立ってくれた。思わず花京院の制服の裾を掴むと、花京院はそっと私の手に自分の手を重ねてくれた。
「警察に通報を頼むと言ったのだ。」
花京院は口調を少し荒げながらも、女性に警察を頼むように頼んでくれた。
女性が去ったあと、彼は私の方をじっと見た。
「アンナさん、大丈夫ですか?」
こうやって、目を見て話すのは久しぶりな気がする。先程の強い口調とは一転、心配そうな目で私を見ていた。
「ええ、もう大丈夫よ。ありがとう。」
これ以上心配をかけたくないので、花京院を掴んでいた手を離した。そこでハッと気づいたように、花京院も私に触れていた手を引っ込めた。
「す、すみません。勝手に触れてしまって。」
早口にそう言うと、彼は一足先にみんなのところへと戻っていった。
花京院が触れてくれた部分が、まだ少しだけ温かい。
(それにしても…。)
私は改めて、去りゆくニキビの女性を見つめた。
先程触れた彼女の頬は、生きているとは思えないほど冷たかった。