第55章 正義 1
先を急ぐ私達は、山道をどんどんと進んでいた。今日は生憎の天候で、数メートル先の視界も怪しいほどにあたり一面に霧が立ち込めている。
私は後部座席の真ん中に座り、前の座席に座っているポルナレフとか教員を見た。
ポルナレフに気持ちを打ち明けて以降、彼は変わらずに接してくれていた。もっと茶化されたりするかと思ったけれど、私が思っているよりずっと紳士だったらしい。
むしろ、花京院の方が私を避けているように見えた。
花京院が他の誰と話しているところに混ざろうとすると彼だけ抜けてしまったり、目が合うと逸らされたり…。ろくに会話もできないままでいる。理由はわからないけれど、嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?
そんな事を考えていると、助手席に座っている花京院が、運転しているポルナレフに声をかけた。
「ポルナレフ、運転は大丈夫か?霧が相当濃くなってきている。」
「ああ、ちょっち危ないかなぁ。」
以前は後部座席に花京院と隣同士で座ることも少なくなかったのだけれど、あの日以来彼の定位置は助手席になってしまったようだ。
実際、地図を読むのも得意だし、広範囲を探索できる彼が助手席に向いているのは確かだけど。ホッとしたような、少し寂しいような複雑な気持ちだわ。
「アンナ、ソードマゼンダの風でどうにかならねぇのか?」
「流石に無理よ、承太郎。一時的にどうにかなっても、また向こうからどんどん霧が来るわ。」
「まだ3時前だが…。しょうがない、今日はあの街で宿を取ることにしよう。」
そう言っておじいちゃんはすぐ近くに見える街を指した。
良いホテルがあるといいな。いい加減シャワーも浴びたいし。
街から視線を戻すと、おぞましい光景が目に入り、私は思わず息を呑んだ。
「っ!?」
今のは、犬の死体…?
「承太郎。」
「ああ。」
承太郎も同じものを見たようで、眉をひそめていた。どんな街かはわからないけれど、治安の悪いところなのかもしれない。
私は改めて街の方を一瞥した。
崖より少し下に位置しているせいか、街全体に深い霧がかかっていた。