第53章 運命の車輪 5
おまけ
(あ~あ、アンナのやつ耳まで真っ赤にしてらぁ。)
動き始めた車の揺れに身を任せながら、ポルナレフはアンナと花京院を眺めていた。
疲れたからと断ったものの、ガタイの言い彼にとってアンナ一人膝に乗せるくらい何てことはない。
ただ、責任感から自分の想いに蓋をしているアンナに対して、少しくらい己の欲望に素直になってもよいのではという世話焼き心がわいた。
ポルナレフはすでにアンナのことを妹のように思っている。
安全とは言えない旅だからこそ、アンナには後悔の少ない生き方をしてほしいと思ったのである。
でも、それは本当に自分のお節介だったのかもしれない。
アンナを自分の膝に乗せる花京院を横目に見ながら、ポルナレフはそんな事を考えていた。
「その…嫌でした?」
しおらしい態度で質問をしている花京院の瞳の奥がギラギラとしているのを、ポルナレフは見逃さなかった。
先程もアンナの意思を確認する前にがっつくように自分の膝に乗せ、その後もアンナを離すまいと、自分の方に引き寄せている。
(あの花京院が、ヤキモチねぇ。)
彼らしくない冷静さを欠いた大胆な行動も、嫉妬心や焦燥感からくるものだとしたら納得がいく。
(ま、本人は無意識だろうがな。)
これは自分が思っている以上に、円満に事が運ぶかもしれないと内心ほくそ笑むポルナレフだった。