第7章 花京院典明 1
承太郎の家にしばらく滞在することになったものの、今後の計画についてはほとんど白紙のままだった。
承太郎が留置場にいれられて、しかもスタンドを発現しているかもしれないってこと、私がディオに狙われていると発覚したことが重なって急いで日本にやってきたからだ。
時差ボケのせいで私は、朝の3時前から目が覚めていた。なので、朝から学校に行く承太郎をホリイちゃんと一緒にお見送りをする。
「承太郎~、忘れ物よ!はい、いってらっしゃいのキス!」
ちゅ!
「このアマ。いい加減子離れしろ!」
高校生にもなって、キスでお見送りだなんて。しかも、あの承太郎がねぇ。
私はそれが面白くて、玄関を出ていこうとする承太郎の背中に声をかけた。
「承太郎!もう一個忘れ物よ!」
「…?」
承太郎は足を止め私の方を振り返る。
「ほら、かわいい御姉様にいってきますのキス!」
そう言って私は自分の頬を指差した。
「アンナ、てめー。」
「ふふふ。冗談よ。そう凄まないで。」
やっぱりダメか。
いや、ここで素直に応じないのが空条承太郎だ。
むしろ、素直にキスさせるホリイちゃんがすごい。
「じゃ、気を付けてね。」
「いってらっしゃーい。」
承太郎はもう一度だけ私達の方を見て、それからすぐ背を向けて出ていった。
あんたがそんな甘ちゃんだから、ホリイちゃんがいつまでも子離れしないのよ?というのは、心の中だけにとどめておいた。
「ホリイちゃん、なにか手伝おうか?」
「ありがとう、アンナちゃん。じゃあ、パパたちの朝御飯持っていってくれるかしら?」
「オッケー。」
そして、朝食を持っていって程なくして私は激しい睡魔に襲われた。
時差ボケを治すには起きておくべきなのだろうけど、少しくらいなら大丈夫だろうと仮眠を取った。