第48章 幕間
「よくここがわかったわね。」
「街で『天女のような占い師が、傷を治してくれた』と騒ぎになってたんでな。出処をたどって居場所を突き止めたのよん。」
お互い、街で噂になってたってわけね。
『さすがワシの孫じゃわい!』と、おじいちゃんは豪快に笑っていた。
おじいちゃんのケガと義手を治しながら、お互いに何があったのか軽く情報交換をした。
話している間中、ポルナレフは1人ガンジス川の方を向いて体育座りをしていた。デートした相手がスタンド使いだったのがよほどショックだったらしい。
「お互い大変だったわね。なんにしても、すぐに集まれてよかったわ。さっ行きましょう。」
「そうじゃのう。ほれ、運転を頼むぞポルナレフ。」
そう言って投げた車のキーは、見事にポルナレフの頭に刺さっていた。
「おい、元気を出さんか。襲われたのはわしとアンナじゃぞ。」
「いっそのこと、そっちのほうが良かった…。」
頭に刺さったキーには目もくれず、ポルナレフはまだ俯いている。
まったく、子どもじゃあないんだから。
私は小さくため息をつくと、ポルナレフの正面にしゃがみこんだ。
「恋をしてもこうなっちゃあいけないんじゃなかったっけ?ポルナレフ。」
そう言って、目元で手をハートマークにして見せる。
ついでに、顔の筋肉をギュッと真ん中に寄せて渾身の変顔もしてみた。
「何だと…!ギャハハハ!アンナ!フヒヒ…おめー、なんだその顔。」
ムキになって顔を上げたポルナレフは、私の顔を見るなり声を上げて笑った。あまりにも笑うものだから、私はやめ時を見失い変顔のまま硬直していた。
ひとしきり笑ったあと、ポルナレフは目元の涙を拭って、それからわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
「おめーに慰められてちゃあ、世話ねぇな。」
そういうポルナレフは優しい目をしていた。
頭をなでていた手が下へと移動し、私の頬をそっと撫でる。ポルナレフの厚みのある手は、温かくて心地が良かった。変顔でギュッと力を入れていた筋肉が、自然とほぐれていく。
ポルナレフは「メルシー」と小さな声で囁くと車の方に向かって歩いてい行った。
もう。普段は荒っぽいくせに、こういうときだけ優しくなるんだから。
「よし、とっとと出発するぜ。キーはどこだ?」
「お前さんの頭の上じゃよ、ポルナレフ。」
こうして、私達は無事ベナレスを出発した。
