第48章 幕間
私の傷の手当が終わったタイミングで、承太郎がちょうど戻ってきた。
けれど承太郎は、タバコを吸いに行ったにしては随分と不機嫌そうな顔をしていた。
「じじいがヘマをやらかしたらしい。今日中にここを出ることになりそうだぜ。」
承太郎の話によると、アメリカ人のジョセフ・ジョースターが医者を殺害して逃げ回っていると街で大騒ぎになっているとのことだった。
何やらかしたのよ、あのジジイ。
「仕方ないわね。合流する前に私達で移動手段をゲットしておきましょう。」
「警察が見張ってるから、公共機関は無理だぜ。」
「なら、車で行くのがいいだろう。車なら国の管轄を通らずに国境を越えられる。」
私は、手を顎に寄せて考え込んでいる花京院の方をチラリと見た。
『君のそのくしゃッとした笑い方、好きだなぁ。』
さっき言われた言葉が蘇る。
深い意味はないとわかっているはずなのに、思わず頬が熱くなってしまう。
「アンナさん?大丈夫ですか?」
花京院に顔を覗き込まれてハッとする。
いけない。今は集中しなきゃ。
「だ、大丈夫よ。車を買うんでしょ?」
「はい。ただ、ホテルの場所も知られているということは、僕らも下手に動くと通報されかねない。どうしたものだろう。」
「それなら、私に良い案があるわ。」
そう言うと、私は承太郎と花京院にサングラスを手渡した。
「これを…、つけるんですか?」
「グッドルッキングガイってやつよ。なめられないよう、しっかりエスコートしてちょうだい。」
そう言ってウィンクすると、承太郎に心底嫌そうな顔をされたが、見なかったことにした。
続いて手頃なお店でスカーフを買うと、現地の女性と同じように頭にゆるく巻きつけた。