第47章 女帝と水の聖杯 6
正直なところ、僕はこれまでこんな風に誰かに思っていることを素直に話したことがなかった。
ポルナレフに言われたとおり、自分なりに誠実に伝えたつもりだが、言いたいことの半分も伝わっていないんじゃあないかと思う。
アンナさんの反応を見るのが怖くなり、思わず俯いてしまった。
そんな僕を見かねてか、アンナさんが僕の右肩にそっと手を添えた。
そして、いつもよりも優しい口調で話し始めた。
「バカね、花京院。」
アンナさんは僕の方に顔をぐいっと近づけると、まっすぐ僕の目を見つめた。
「本当のこと、教えてくれてありがとう。あなたの言う通り、私は素直になるのが苦手よ。でもね。辛いって言えない私が、今までその優しさにどれだけ救われてきたのか、あなた知らないでしょう?今日だって、ハイエロファントが来てくれて、花京院がいてくれてどれだけ励まされたと思っているのよ。」
気を遣わないでくれ、と言おうとしたがすぐに辞めた。
僕の肩に置かれたアンナさんの手が震えていたからだ。
アンナさんも本音を伝えようと、必死に言葉を紡いでくれているのだとわかった。
「あなたが思っている以上に、私はあなたのことを頼りにしてる。これからも遠慮せずに、思っていることを聞かせてくれたら嬉しい。私も頑張るから。」
そう言って、笑う彼女は心底嬉しそうだった。
つられて僕も笑みがこぼれる。
「ふふふ。君のそのくしゃッとした笑い方、好きだなぁ。」
思ったままにそう口にすると、アンナさんは顔をポッと赤く染めた。
深い意味はなかったが、彼女の反応を見るとこちらも照れてしまう。
「か、花京院!何こっ恥ずかしいこと言ってるのよ!」
「『思ったことを言ってほしい』と言ったのはアンナさんじゃあないですか?それとも、前言撤回するかい?なんてね。」
照れ隠しにそう言うと、アンナさんは顔を真赤にしたまま「撤回はしない…」と小さく呟いた。