第41章 幕間 4
アンナの治療が終わるのを、花京院とポルナレフは別室で待っていた。
大きな戦闘のあとだ。今回は失ったものも多い。
肉体的にも精神的にも疲れていた二人は、特に会話をすることもなくただ座っているだけだった。
ポルナレフは、ふとベッドサイドに座っている花京院の方を見る。
(気が気じゃねーって面してるな…。)
花京院も承太郎も、この旅に出るまでは普通の高校生だったと聞く。
修行をしていた自分と違って、仲間の死や大怪我に免疫がないのは当然だろう。
一緒に待機していた承太郎は、待ちきれずにアンナがいる隣の部屋に行ってしまった。
おとなしく座っている花京院の方も、心ここにあらずな状態だ。
「花京院。アンナの傷は深そうだったが、意識はしっかりとあったわけだし、命に別状はないと思うぜ。」
「ああ、わかってはいるのだが…。」
「ま、落ち着かねーわな。気持ちはわかるぜ。」
そう言って、ポルナレフは「ふぅー」とタバコを吐き出した。
内心、ポルナレフもアンナの様子が気にならなかったわけではない。
自分が勝手な行動をしたせいで、探しに来たアヴドゥルは死に、アンナも怪我を追ってしまったのだから。
しかし、もう一つ気になることがあった。
「彼女は強い女性だからきっと大丈夫だろう。」
「強い、か…。」
そう、ポルナレフの気がかりとは、互いを「ハニー」「ダーリン」なんて呼び合っていた花京院とアンナの関係性のことである。
(強い、と言うよりは“強がり“だろうぜ、あれは。)
ポルナレフは、ハングドマンを倒した後戻ってきたときの事を思い出していた。
互いに甘い言葉を吐いてかと思えば、それきり特に話すことすらしない。行動と言動があまりにちぐはぐな二人。
自分が恋人同士なら相手としっかり目を合わせて愛を囁くだろう。
おそらく付き合ってはいないのだろうが、顔を真っ赤にしながらいちいち反応していたアンナは『その気』なのだろうとポルナレフは思った。
花京院が知っていてからかっているのであれば、あまり感心できることでもない。
ポルナレフは下世話だとは思いながらも、花京院に思い切って聞いてみることにした。