第37章 皇帝と吊られた男 5
―花京院視点―
J・ガイルにトドメを刺した直後、アンナさんがその場にしゃがみこんだ。
「大丈夫ですか!?」
僕とポルナレフは急いでアンナ1さんの方へ駆け寄る。
僕らと違ってアンナさんは完全に無防備な状態で背中を深く切りつけられた。
そんな状態でスタンドも使い続けていたのだから、かなり体力を消耗してしまっているに違いない。
それでも彼女は、僕らに心配かけまいと笑顔を見せた。
本当に優しく、強い女性だ。
自分が怪我をしていても関係ない。
いつだって周りの人を必死で守ろうとする。
そんな彼女に、僕を、いや、僕たちを頼ってほしいと思ってしまうのは、いけないことだろうか。
「なんだか気が抜けちゃったみたい。でも、大丈夫よ。」
「何が大丈夫、だ。無茶ばっかりしやがって!」
ポルナレフがそう言いつつ彼女の肩に手を回し、体を支えた。
先程の言い争いが効いているのか、彼女は素直にポルナレフの方にぴたりと身を寄せる。
大怪我をしているのだから、そうしないと彼女は立ち上がるのも辛いだろう。
…なのに、なぜだろう。気持ちがザワザワと落ち着かない。
体格的にポルナレフの方が、彼女の介助に適任だと言うことは、頭ではわかっている。
それでも、ポルナレフに体を預けるアンナさんを見て、「彼には弱みを見せられるのか」と思ってしまう自分がいた。
僕は…、アンナさんに頼られたいと思っているのだろうか。
彼女のことになるとどうも調子がおかしくなる。
普段は考えもしないような、ドロドロとした感情が湧き上がる。
いや。
これはきっと、仲間だと思っている彼女から距離を取られているからだ。
仲間として心を開いてほしいと思っているのだと、僕はその違和感に蓋をした。
気持ちを切り替えようと、僕はアンナさんとポルナレフに声をかける。
「背中の傷、血は止まっているようですが、早く診てもらったほうが良いですね。」
「とにかく、まずは承太郎たちと合流しねーと。アンナ、おめーを抱えて移動するが、もう文句言うんじゃねーぞ。」
アンナさんがうなずいて、ポルナレフの肩に腕を回そうとしたときだった。
「ポルナレフ、君も怪我をしているだろう?彼女なら僕が連れて行こう。」