第27章 黄の節制 1
「お、そこの熱々カップル!アイスクリームかココナッツはどうだい?ココナッツはこんな風に二人で飲めば、盛り上がること間違いなしだよ?」
ニヤニヤしながら、ココナッツに二つストローをさして私たちに見せた。
「ココナッツか…。君はどうしたい?」
私の肩に手を回しながら花京院は聞いた。急に触れられたことにドキッとしたが、意図を理解した私はニヤリと笑って返事をする。
「ダーリン、あなたに任せるわ。」
「では、アイスの方をもらおうか。」
あいよ、と返事をすると店員は店の奥にアイスを取りに行った。
店員が見えなくなり、二人同時に吹き出した。
「ココナッツか…君はどうしたい?…ふふ。」
「君の“ダーリン”もなかなかでしたよ。」
花京院に至っては目に涙を浮かべるほど笑っている。
「手を繋ぐのは恥ずかしいくせに、恋人ごっこならできるんだ?」
「アンナさん、その言い方は語弊がありますよ。僕はアンナさんだから、こんな風にふざけたりできるんです。」
「それって…。」
「なんだい?楽しそうだね。」
店員の声にはっとして、私は続きを言うのをやめた。奥から戻ってきた店員はウィンクしながら、アイスを手渡す。
「仲良しついでに少しおまけしておくよ!せっかくの旅行楽しみな!」
「ありがとうございます。」
花京院はお礼を言いながら、代金を支払った。
「お兄ちゃん、どっかで見たと思ったら、さっき背が高くて男前な兄ちゃんと小さいお嬢ちゃんと一緒に来てくれていなかったかい?」
「え?」
「あーいや、人違いならいいんだ。毎度あり!」
そう言うと店員さんは次のお客さんの相手を始めた。
「背の高い男前と女の子って…」
「ジョジョとアンのことだろう。ホテルにいたはずの僕が、どういうわけかジョジョたちとアイスを買いに来たことになっている。」
「何か変だわ。一旦ホテルに戻りましょう。」
私たちはアイスを片手に、急ぎ足で来た道を引き返す。
私の心臓はバクバクとうるさいのは、きっと走っているせいじゃあない。
“僕はアンナさんだから、こんな風にふざけたりできるんです”
さっきの花京院の言葉。
それは花京院が、私を仲間と認めてくれているって意味なのはわかってる。
でも、花京院のその言葉がいつまでも耳から離れなかった。