第4章 悪霊にとりつかれた男 1
ここは日本の成田空港の国際ターミナル。
私たちはここである人物を待っている。
「パパ!ここよ!」
「ホリイ!!!」
そう、ジョセフをパパと呼ぶこの女性ー空条ホリイこそ、私たちが待っていた人物。私たちが会いに行く承太郎の母である。
おじいちゃんはホリイちゃんを見つけるなり、
「おい、そこをどけ!」
と、通行人を押し退け一目散に駆けていった。2メートル近くあるおじいちゃんに押されては、小柄な日本人男性はひとたまりもない。
「パパぁ!よく来てくれたわ!」
「フフフ。わしは一人娘のお前が困っているなら地球上どこでも24時間以内に駆けつけるつもりじゃ!」
熱い抱擁を交わしながら、甘い台詞を言い合う二人。アメリカではよくある光景かもしれないが、ここは日本。良い年したおじいさんとおばさんが仲睦まじくなどしている姿を、物珍しく通行人がじろじろ見ている。
「見てるこっちが恥ずかしいよ。」
「そう険しい顔をするんじゃあない。久しぶりの親子の再会なのだから、仕方ないさ。」
「久しぶり、ね…。毎年サマーバケーションは一緒に日本で過ごしているはずなんだけど。それに、ホリイちゃんもおじいちゃんも自分の感情を素直に出しすぎよ。親子とは言え、人前で抱き合ってベタベタしてさ。」
「私から見れば、君も十分素直に見えるがね。それにしてもずいぶん突っかかるじゃあないか。ジョースターさんを取られてしまってやきもちでも妬いているのかい?」
「まさか!そんなわけないでしょ!」
「どうだかね。」
アヴドゥルはニヤリと笑いながら私の方を見た。
確かに、私はおじいちゃんにあんな風に甘えるなんてできないし、どこまでも素直なホリイちゃんがちょっと羨ましいなとも思う。それに関してはやきもちなのかもしれない。
でも、周りの人にじろじろ見られながら抱き合うなんて絶対ごめんだ。
そうこうしているうちに、感動の再会も終わったらしく、おじいちゃんが私たちに“行くぞ”と合図する。
「さあ、そろそろいくか。」
「そうね。」
私たちはそれぞれ荷物をもって、二人のところへ向かった。