第10章 【明智光秀】待人来る②【R18】
しばらくして、光秀の腕枕に笑みを浮かべる桜姫。
彼の身体に指を這わせて遊んでいると「もっとして欲しいのか?」と言葉が飛んできて、もう結構ですと返事をした。
「光秀さん」
「なんだ」
褥の中で微睡始める頃、桜姫は彼の手に自分の手を絡めて声を掛ける。
「私は、光秀さんだけのものです。貴方がどこへ行こうと何をしていようと、私は貴方を待ってるから」
「桜姫、俺はお前の傍にずっといる事はできない。それでもいいと言ったお前に甘えていたのかもしれない。寂しい思いをさせただろう」
「寂しくないと言ったら嘘になるけど……絶対に帰ってきてくれるから」
ニコリとほほ笑む桜姫は、光秀の心を少しづつ溶かしていくようだった。
どちらからともなく唇を合わせる。甘い吐息が抜けていき愛を絡め合った。
「だって、光秀さんが秀吉さんみたいに甘い言葉を言ったり、政宗みたいに過剰な接触をして来たら逆に驚くよ」
「……そうだな。だが……次からはお前に手出しされぬよう、奴らの前ではお前を甘やかすことにしよう」
光秀は怪しい笑みを浮かべると、桜姫の身体を撫でていく。その感触に身体を捩らせた桜姫は頬を赤らめて彼の胸に顔を埋めた。
「ところで、光秀さんはどうしていつも、離れていた間の私の事を知っているんですか?」
突然の質問に光秀は驚きの表情を見せる。そしてクスッと笑うと桜姫の頭を撫でてやった。
「それは秘密だ。俺にはお前の事を知る権利がるからな」
「だったら私も光秀さんの事知りたいです」
「知る必要のある事は伝えている」
納得はいかないもののこれ以上言ったところで光秀は教えてくれないだろう。桜姫は疑問を解決できないまま彼に寄り添い瞳を閉じた。
「できる限り文を書こう。お前も自分の事を書いた文を俺の部屋の文机に置いておけ」
光秀の言葉に一つ頷いた桜姫。
それ以降、文字を書くのが苦手な桜姫も一生懸命に文を書いた。机の上に置かれた文は人知れず光秀の元に届けられ、拙い文字で書かれた恋文を報告書の代わりに読みほほ笑む光秀が見られるようになったのだった。