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【イケメン戦国】天下の姫君【短編集】

第9章 【明智光秀】待人来る①


とある山間の小さな山小屋で、これまた小さな光を灯した一室。
届いたばかりの書簡を開き確認をする光秀は、最後の報告書を読みながらその眼を細める。誰にも聞こえないような小さなため息は暗闇の中へと消えていった。

一方、安土城内に残された桜姫は、広間で他の武将たちと夜食を食べながら歓談している。

「いつ食べても政宗のおやつは美味しいね」

笑顔を向けて政宗にそう告げれば、当たり前だと言わんばかりの彼が桜姫の頬に付いた餡を舐めとった。くすぐったそうに首を竦めて再び甘味を口にする。
現代でいうダイエットとは無縁であると言わんばかりの桜姫。その姿をみて他の武将たちも笑みを零していた。

数日後、いつの間にか安土へ戻ってきた光秀は、信長への報告を終えて桜姫の部屋へと向かう。廊下から声を掛ければ、部屋の中から明るい声で返事が聞こえた。

「おかえりなさい。光秀さん」

襖が開いて、桜姫は会いたくて仕方のなかった人物に飛びつく。胸に飛び込んできた彼女をギュッと抱きしめた光秀はそのぬくもりを確かめ、大きく息を吸った。
部屋に招き入れられた桜姫に茶を淹れてもらい書机の前に座る。もっぱら彼女の書机は針子の仕事道具が乗せられていて文字を書く気配はなかった。何しろ500年後から来たという桜姫はこの時代の文字があまり書けないのだ。時折、光秀や三成に教えてもらってはいるのであるが、文字を書く必要もないのでその進みは遅い。

「こっちへ来い」

なにやら茶菓子を用意していた桜姫の手を掴み、光秀は彼女を自分の膝の上へ座らせた。背後から見える耳元が赤く染まっているのは恥ずかしさからだろう。
桜姫の腹の前で腕を組んだ光秀は、再び彼女のぬくもりを感じ満足した。髪を掬い上げ、その香りを嗅ぎ、項に唇を落とす。

「会いたかったぞ」
「私もです……」

嬉しそうに返事をした桜姫は、光秀と離れていた間の話を始めた。恋仲になったとはいえ、光秀の仕事の様子は変わることがなく、突然、城や御殿を空けることは少なくない。そんな自由な行動をしていても、桜姫は彼の帰りを待ち、彼の思いを受け止めてくれていた。
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