第8章 【豊臣秀吉】医食同源②【R18】
~翌日~
天主へ向かう廊下で、書状をいくつか運び歩いていた秀吉は向かいから来た光秀に呼び止められた。
「桜姫はどうした?治ったのであろう」
簡単な書状を配り歩くのは桜姫の仕事で、昨日から仕事をしていたはずだと問いただされる。
「いやぁ、その…まだ部屋で寝ている」
それが何を意味するのか、分かっているが突っ込まずにはいられないのが性分だ。光秀はクッと笑いをこらえながら疑いの目を向けた。
「少し熱がぶり返したみたいですね。肌艶は良かったみたいですけど」
背後から追い打ちをかけるように家康が声を掛けてくる。挟み撃ちされた秀吉は苦笑いを浮かべる事しかできなかった。
桜姫から求めてきたこととはいえ、ずいぶんと我を忘れがっつきすぎてしまった事は言い逃れのできない事実である。
朝起きた時の桜姫は微睡みながらも笑顔で幸せだと言ってくれたが、無理が祟ったのか少し熱を出してしまい、再び床に就いてしまった。
家康には存分に文句を言われ、詫び代わりに桜姫の仕事を手伝っている。さすがに針子の仕事は変わってやれないから、こうして世話役の仕事をしているというわけだ。
「なんだ、あいつまた熱出したのか?」
廊下の端から歩いてきた政宗はニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらへ向かってくる。
絶対に政宗は桜姫の所に行った帰りだと秀吉は覚った。政宗の挑発に顔を赤くして弁明する桜姫の顔が思い浮かぶ。
またしばらくは禁欲をしようと心に決めた秀吉であった。