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【イケメン戦国】天下の姫君【短編集】

第5章 【石田三成】鈴音と共に…①


三成に貰った簪がとても気に入った桜姫は翌日から自身の髪を結い上げ、それを飾った。
涼しげな音が廊下に響くたび、女中や家臣たちまでもが笑みを零す。

「首輪を付けられたのか?」

廊下の曲がり角から現れた光秀が怪しげな笑みを浮かべて突然話しかけてきて驚いた。

「首輪じゃありません。簪です」

頬を膨らませて簪を見せびらかす姿はまるで子供だ。簪を一つ突いて音を奏でさせた光秀は呆れた顔をしてからもう一度笑みを零した。

「それがあれば、貴様がどこにいても気づくからな」

光秀の背後から信長の声がして、ヒョイとかかとを上げて背を伸ばせば城主の姿がある。

「お出かけですか?」

城内で信長が天守以外の場所にいることはなかなか珍しい気がして問いかけた。

「いや、今戻ったことろだ」

信長も桜姫の髪飾りが気になったのかその先端に指を掛けて鈴の音を楽しむ。用もないのにチリンとなる音が響いたのか、反対側の廊下からは秀吉と三成が小走りでやってきた。

「桜姫様、どうしましたか?」

秀吉の背後から来ていた三成が慌てて声を掛けるが、廊下の角に信長と光秀の姿が見えた秀吉が彼を制止する。

「御館様、お帰りでしたか」

秀吉の出迎えに笑いをこらえているかの様な信長は、もう一度桜姫の鈴を鳴らした。

「良いものを貰ったな」

そう言って、その場を後にする信長に光秀と秀吉は付いて歩く。その場に残った三成は桜姫のキョトンとした顔を見てほほ笑んでいた。

「三成君は行かなくていいの?」
「大丈夫ですよ。信長様の御用があるわけではないので、私はこれを片づけに行く所です」

手に持っていた本を見せ、今から書庫へ向かう所だったと言う三成。道すがら桜姫にやった鈴の音が何度も聞こえたため何かがあったのかと思い秀吉と共に慌ててこちらに向かったという話だった。

「信長様と光秀さんに自慢してたの」

頬を染めてそう話してくれた桜姫の頭に手をポンと乗せて、チリンと音を鳴らす。

「喜んでいただけて嬉しいです」

桜姫はそのまま三成と書庫へ向かい、本の片づけを手伝った。途中で入ってきた家康にも簪を褒められて、とても良い気分になる。
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