第5章 【石田三成】鈴音と共に…①
この時代での暮らしにも慣れて、お城の武将たちともずいぶんと仲良くなった桜姫。
大好きな人とも恋人同士になれたことで益々毎日が楽しいと思えるようになっていた。どこぞの姫様扱いをされることだけは中々慣れないのだけれど、それでもお針子の仕事をしたり、女中の皆とも仲良くなり料理や掃除を手伝わせてもらっている。
最近では、三成に勉強を教えてもらったり、家康に薬学を学んだり、新しいことも覚え始めた。
今日は、お針子の仕事も特になく信長様からの仕事の依頼もない。特にすることもなく縁側で読書をしていた桜姫であるが、それにも段々飽きてきてしまった。
「おや、桜姫様。読書ですか?」
にこやかな顔で傍まで寄ってきた三成もまた、両手に本を抱えている。
「三成くんも読書?」
「えぇ、新しい戦術書が入ったのでお借りしてきたところです。今日は読書日和ですね」
三成にとってはいつでも読書日和だろうなと思ったのは言うまでもない。
しかし、あの抱えられた本を一気に読みつくしてしまうのだろうかと思うと感服する。
失礼しますと丁寧にあいさつをして去っていった三成は、いつも通り秀麗で思わず笑みがこぼれた。
そんな彼を見送った桜姫はふと思い出したかのように立ち上がると持っていた本を閉じる。
部屋に戻る途中で光秀に会ったが、信長のいる天守へ行く様子だったので会釈だけしてすれ違った。