第4章 【徳川家康】揃い飾り②【R18】
~翌日~
「家康様、おはようございます。桜姫様はご一緒ではないのですね?」
庭に水を撒いていた三成に声を掛けられた家康は、何故、女中ではなく三成が水を撒いているのかという疑問が湧いた。しかし、なにか楽しそうに水を撒いている三成を見てため息をつきながらも特に問いただすことはなかった。
「昨日飲み過ぎたみたいで体調不良。まだ寝てるよ」
飲み過ぎた後にがっつきずぎたからとは言えず、そう返事をする。
「そうとう酔って見えたからなぁ」
いつの間にか隣に立っていた秀吉が、昨日の桜姫の姿を思い出しながら呟いた。
「相当酔ってましたね、柱と喋ってました」
「三成みたいだな」
庭で水を撒いている三成に視線を移すとこちらをみて首をかしげている。
のん気な物だと思いながら、家康は踵を返した……とそこへ廊下の向こうから桜姫が走り寄ってくるのが見え、足を止めた。
「体調不良のわりに、ずいぶんと元気そうだな」
調子が悪そうには見えない桜姫を見て秀吉が笑っている。家康は大きなため息をついて彼女を見やった。
「家康~」
家康に向かって一直線に掛けてくる桜姫を両手で受け止めた家康は、自分の胸に収まっている彼女を見下ろす。
「起きたら部屋にいないからびっくりしたよ」
「良く寝てたから……」
彼女の前髪を掻き上げながら家康が頬を赤く染めた。
「体調は大丈夫か、桜姫?」
家康の背後から秀吉の声がして、桜姫は家康から身体を離すと慌てて挨拶をする。庭先にいる三成も視界に入り小さく手を振って見せてから、もう一度秀吉に笑顔を向けた。
「大丈夫です。昨日は飲み過ぎてしまったみたいですみません」
「信長さまも心配していたから、後で顔を見せに行くといい」
秀吉に言われて、桜姫は家康の顔の見る。
「今から、信長さまの所に行くから一緒に行く?」
急ぎの用事ではなかったが、桜姫がそんな顔をするんじゃ行かないわけにはいかないと先に信長の天守へ行くことにした家康。
天守へ向かう2人の背中を見てほほ笑む秀吉は、そろそろ水まきを終えるようにと三成に言い渡してその場を去る。
「仲睦まじくてうらやましいです」
水桶の水を豪快に撒き散らした三秀は、そそくさと片付けをして秀吉の後を追った。