第4章 【徳川家康】揃い飾り②【R18】
宴の席を立った家康は、虚ろになっている桜姫を抱えて広間を後にした。
やはり打掛のある分重たいが、鍛え方が違うのだ。抱えて歩くなんて造作もない。
「歩きにくいから、掴まってて」
いつもならば恥ずかしがるところだが、今日はしっかりと首に手を回してしがみついてきた。やはり相当酔っているらしい。
もっと早く対処してやればよかったかと後悔した。しかし、自分のために開かれた宴であるあまりわがままも言えないのが事実だ。家康は小さくため息をつきながら、部屋へ歩いた。
「家康?」
「なに?」
フフッと笑った桜姫が胸元の飾りに手を伸ばす。
「ほら、危ない」
バランスを崩しそうになるのを堪えて、彼女を抱え直した。
「似合ってるって褒められたよ」
「あんたが作ったんだから、当たり前でしょ」
桜姫は今度は自分の髪飾りに手を伸ばして少しだけ触れるとまたフフッと笑みを浮かべる。何が楽しいのだろうか?そう思ったものの嬉しそうなのであまり気にしない事にした。
「ほら、着いたよ」
部屋に付いた家康は、ゆっくりと桜姫を自分の腕から降ろす。打掛を脱がせてしわにならないように衣文掛けに整えた。
そうしているうちに、視界から桜姫が消えてしまい、振り返れば柱に寄り添うように立っている彼女の姿が見える。
デジャブだろうか?以前三成が柱に向かって話しかけているのを見かけたが、それと相違ないように見えて仕方がなかった。
「何してんの?」
桜姫を早く寝かせなくてはと思い、彼女に近づいていく家康は、不意に目に入った彼女の項があまりに綺麗で思わず息を呑む。
柱に寄りかかり心地よさそうにしている顔は扇情的で興奮材料にならないはずがなかった。