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【イケメン戦国】天下の姫君【短編集】

第1章 【伊達政宗】音の在処①


隣国の小競り合いを収集させるため安土の城を出ていた政宗は、自身の馬をこれまでにないほど早駆けさせて城へと向かっていた。

「……桜姫」

馬上で呟いた声は馬の脚音にかき消され誰にも届かない。



隣国での諍いは政宗の手腕ですぐに解決し、その後処理をしていた時であった。安土からの伝令が政宗に一枚の文を手渡す。秀吉からの急ぎの文であり政宗も自分の仕事の手を止めてそれを開き見た。
文の内容に一瞬動揺の色をみせた政宗の瞳。隣で仕事をしていた家臣も彼の顔色が変わったことに気付いたようだった。

「容体は?」

思わず伝令の者に尋ねてしまったが、彼が詳しい事情を知っているはずもない事は分かっている。だが、聞かずにはいられない事態だ。

「詳しい事情は……」

そう返事が来ることは分かって尋ねたのだ。政宗は伝令の者の肩をポンと軽く叩きゆっくり休めと一言告げつつ礼をした。

「政宗様?」

何かあったのであろうと察する家臣たちではあるが、何も告げてこない彼に何があったのかと尋ねる者もいない。将からの言葉を待つしかないと空気がそう教えていた。
その後、黙々と事後処理をしていた政宗の手は尋常でない程に動き、書類を認め丸2日はかかりそうだった仕事はあっという間に終わりを告げていた。

「悪いが俺は先に安土へ帰る」
「お一人でですか?」
「お前たちは一日休んで、後から戻れ」

政宗は食事もろくすっぽ摂らないまま必要最低限の支度をして表へ出る。そうして引き留める家臣たちの声も聞かずに安土へと飛び出していったのだった。

秀吉からの書状には、桜姫が落馬し怪我をしたという内容が書かれていた。怪我をしただけならいざ知らず……丸一日目を覚まさないと知らされては居ても立っても居られないのが心情だ。
安土から先の土地まで丸一日かかる。書状が書かれるまでに一日様子を見ていただろう、その後、書状が届くまで一日かかり、自分が仕事を終えて彼女の元へたどり着くまでまた丸一日、経過しているとなればすでに桜姫が怪我を負ってから3日は経っている事となる。

無事でいてくれ……。

今までにこんなにも焦りを感じたことがあっただろうか?
不安に駆られたことがあっただろうか?
一体、何故、何があった?
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