第2章 【伊達政宗】音の在処②【R18】
~後日談~
桜姫の声も体調もすっかり元に戻った頃。再び政宗は仕事の都合で安土を離れることとなった。
旅支度を手伝う桜姫は、寂しい気持ちを抑えながら笑顔を見せる。
「桜姫?」
「はい」
向かい合った政宗は桜姫の頬に手を添えて、軽い口付けを送った。
「いいか、俺がいない間にまた馬に乗ったりするんじゃねぇぞ」
あの日から桜姫は一度も馬に乗ってはいなかった。もちろん政宗が走らせる馬にも乗っていない。
何度か馬で出かけようかと考えた日もあったが、桜姫が怖がったりまた何かの症状が出ても困ると思った政宗がそれをしなかったのだ。
桜姫は苦笑いを浮かべながら頷いて頬を染める。
「帰ってきたら俺の馬に乗せてやるから」
「……いいの?」
「俺と一緒なら怖くないだろ?」
満面の笑みを浮かべる桜姫に、政宗はもう一度口づけを送った。
「少しの間、いい子で待ってろよ。帰ってきたら嫌って程愛してやる」
ほんのり掠めるように尻を触っていった政宗にプクッと頬を膨らませた桜姫に、それを揶揄う様に手を振って出かけていった政宗。
「気を付けていってきてくださいね」
大きな声で彼を見送った桜姫は今日も幸せを噛み締めていた。