第16章 【伊達政宗】無自覚な心①
動物は決して嫌いではない。
政宗の御殿にいる照月と遊ぶのも大好きだ。でもいつしか大きな虎になるのだろうか?と時々考える。
桜姫は照月用の座布団を作りながら、御殿の外から馬の嘶きが聞こえてきたことに振り返った。
政宗のご帰還である。
軽く片づけをして彼を出迎えるため、表に出た。
今しがた下りた馬を自分で引いて厩へと向かっていく政宗に追いついて「おかえりなさい」と笑顔を向ければ、額に優しい口付けが落ちてくる。
車や電車のないこの時代で、移動手段は徒歩、篭、馬が主なものだ。政宗の馬は毛並みも良く足も速い彼自慢の馬で、桜姫もこの時代に来た当初、初めて乗せられた馬が彼であった。
それから幾度となく色々な馬に乗せては貰っているが、一向に自分一人で乗りたいとは思わない。
車の運転すら危うかったのに、馬に乗れるはずもないし、この時代の交通ルールも分からないので仕方がないところもあるのだ。