第15章 【豊臣秀吉】温泉へ行こう【R18】
秀吉の御殿で留守番をしていた桜姫は、縁側に座り大きめの木桶に足を浸けて寛いでいた。
城から戻って来た秀吉は、そんな彼女の姿を見つけそっと背後に歩み寄るとふわりとだきしめ「ただいま」と声を掛ける。
突然に背後から聞こえてきた愛しい声に、フフッと笑みを零した桜姫は、「おかえりなさい」と返事をして、後ろに振り返った。
「水浴びか?」
木桶に浸けている足を見ながら秀吉が問いかけるが、今日は水浴びをするほど暑くもない。そこへ手桶を慎重に運んできた三成がやってきた。
「秀吉様、お戻りでしたか。お疲れ様でございます」
頭を下げようとした三成は、手桶の中身を零して慌てている。
「あっ、三成くん。大丈夫?」
「すみません、新しいものをすぐに」
「ううん、大丈夫。ありがとう。もう秀吉さんも帰ってきたしお部屋に戻るよ」
「では、手拭いをお持ちしますね」
三成はそう言って踵を返すと、手拭いと雑巾を取りに戻っていった。
背後にいる秀吉に、後ろ手で抱き付いた桜姫は、包まれた彼の腕に顔を埋めてフゥと息をつく。
三成に届けてもらった手拭いを受け取ったのは秀吉で、木桶から上げた桜姫の足を丁寧に拭いてやった。
「水ではなく、湯だったか」
木桶から上げた足は温かく、浸けていたのが水ではなく湯であったことに少し驚いた顔をする。
「足湯だよ」
ぽかぽかと温かくなった足で裸足のまま廊下を歩いては冷えてしまうからと秀吉は桜姫を姫抱きして部屋まで運ぶ。ずっと縫物をしていて、足がむくんでしまったらしい桜姫は、家康に頼んで薬湯を貰って来たらしい。それで足湯に浸かっていたというわけだ。
そう言えば、ふわりと柑橘系の香りがしたのはそのせいだったのかと納得する。