第14章 【徳川家康】良薬口に苦し②【R18】
~翌日談~
すっかり元気になった桜姫がワサビの餌やりをしている姿があった。
朝早くから城に出向いていた家康は、その姿を見てほっと胸を下ろす。
「あっ、家康。おかえりなさい」
家康を見つけて駆け寄ってくる桜姫は、昨日までの熱が嘘のようだった。
しばらくは療養のために家康の御殿で過ごす約束をした桜姫。針子の仕事は少しだけにして、家康の仕事を手伝ったり、ワサビのお世話をすると張り切っている。
「桜姫、政宗さんから」
手土産を貰って来たと、彼女に見せると、笑顔がパッと明るく輝いた。
「おやつ?甘味?」
「ちゃんと薬飲んだら、食べさせてあげる」
政宗お手製のお饅頭が包まれている風呂敷を家康は机の上に置く。
「もう熱下がったから、薬はいらないよ」
「まだ、声かすれてるし。熱も下がったばかりだから駄目。ちゃんと飲んで」
「声は……ほらっ、昨日家康が……」
頬を染めつつも、よほど薬が嫌いなのだろう。昨夜の情事のせいで声が掠れているのだと言う桜姫。家康は目を見開いてから、盛大にため息をついた。
「あのねぇ……」
桜姫を自分の胸にすっぽりと包み込み、耳朶を甘噛みした家康は彼女の顎を掬い上げるとそっと唇を落とす。
「じゃあ、もっとイイ声が出るようにしてあげようか?」
「えっ……あっ、それはっ……」
ペロリと首筋を舐められて「んっ」と甘い声を漏らしてしまう桜姫。
「お薬飲むから……ワサビが見てる……」
ワサビに恥ずかしがるなんて……可愛すぎて今にも押し倒したくなりそうだ。
家康は、新しい薬を出し白湯と饅頭の用意を始めたのだった。