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【イケメン戦国】天下の姫君【短編集】

第13章 【徳川家康】良薬口に苦し①


本日一、不機嫌極まりないといった表情で廊下を歩く家康の姿を見て、近づこうとするものなど、三成以外はいないだろう。
そんな顔で向かう先は、三の丸の更に奥に位置する針子部屋。襖を開けて、ずらりと並ぶ針子たちが一斉に家康を視界にとらえると、皆一同に手を止めて首を垂れた。
一番手前に座していた針子頭がそのままの姿勢で用件を問えば、表情を変えないままに家康は答える。

「あの子、来てないの?」
「桜姫様でしたら、本日はお越しになっておりません」
「……はぁ、邪魔したね。ありがとう」

家康は小さなため息とともに針子部屋を後にした。
彼の去った針子部屋では、お針子たちが、間近で家康を見られたと浮足立っている様子で、桜姫の恋仲とはいえども、彼女の存在に感謝をした者すらいるようである。
普通であれば家康ほどの武将とこんなに近くで接することなどありえないのだから、若い女子たちがそう思うのも無理はない。

ところで彼女はどこへ行ったのであろうか?
朝の軍議の後より、家康は彼女を探していた。部屋はもちろん、他の武将の部屋や厨、中庭も探して、針子部屋まで足を伸ばしたのに、どこにもいない。

「まったく……」

最近忙しくしていて、やっと暇ができたので城下にでも出かけようと思っていたのに肝心の桜姫がいないのではどうにもならないと再びため息をついた。
家康は腕組みをしたまま、城内の廊下を歩いていると奥の大木の木陰にやっと意中の人物を発見する。
名を呼んでも返事がないところをみると、昼寝でもしているのだろう。
傍まで寄って、もう一度名を呼んだ。
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